漕がねえ豚はただの豚だ

漕がねえ豚はただの豚だ

2023年12月09日(土)

紅の豚

 宮崎駿さんの作品。好きと言えば全部になっちゃうけど最近は「紅の豚」あの自由奔放さ、豚のポルコがダンディで格好良い。そしてこの映画には本当に悪い奴っていうのが出てこない。悪っていってもかわいげがある。水上機という海や川から発信できる飛行機のかっこうよさ。空中戦も凄いけど、飛行機が飛んでいく姿が限りなく自由で美しい。旋回、急降下、大空を駆けめぐるその姿が実に気持ちがいい。そういえば宮崎駿さんは空飛ぶことにすっごく夢を持っていて、様々な作品に「空を飛ぶ」場面が多用されている。あこがれなんだろうなあ。そしてそれはぼくも同様だ。

 紅の豚に出てくる人物はみんな魅力的。空賊の連中も工場の皆も人が良い。ジーナやフィオ、それに工場で働くおばあちゃんたちも実に魅力的だ。

 飛行機の美しさだけではない。飛行機というものの持ってしまった戦争道具という呪われた運命はのちの「風立ちぬ」で徹底的に描かれるが、その萌芽が「紅の豚」にも表れている。戦争の無意味さ。「そういうことは人間同士でやんな。」という豚のポルコの立ち位置もいい。もちろんそのポルコも人間だった頃に戦争に翻弄され、たくさんの戦友を失った過去がある。

 って今回は「飛ばねえ豚はただの豚だ。」というキャッチフレーズにあやかって「漕がねえ豚はただの豚だ」と決めてみた

②人力移動

 カウボーイ気取りのバイク(オートバイ)野郎は、バイクを「鉄の馬」なんぞと気取りやがっている。バカ野郎。自力で動かすこともせず、西部劇語っても、エンジンの振動で胃下垂になるのが落ちだ。化石燃料と、大排気量のエンジンに頼り切っているその姿。自分で動かない分ぶよぶよした姿態に鋲打った革ジャンで「やってる」って思ってちゃ、ちょっと情けないんじゃないのって気になるのは運転免許の取得できないひがみととってもらって結構だ。

③潔さ

 エンジンは自分。漕がなけりゃ進まない。これはカヤックにもつながる人力移動の鉄則だ。自力で何とかする。自分で漕がないのは、ただの豚だってことだ。

 走るのが楽しくてしょうがない。もちろん上り坂には泣かされる。長距離ではかなり負荷がかかる。足がつる。力が入らなくなる。ハンドルを握る手が痺れてくる。疲労はすぐにスピードに表れる。距離を稼げなくなる。スロットルを回せば自動的にスピードが上がってくれるわけではない。

 大変だけれど自力で地図の上を進んでいる達成感がある。自分の力を実感する。そして漕いでいるときの躍動感が「生きている」ことをリアルに感じさせてくれる。そしてとても「自由」だ。まるで飛行機に乗っているような気分になる。小さな、小さな、歯車とわっかと棒だけで出来ている道具だ。そんな素朴な道具で70kmを走るのだ。爽快、快感だ。